生前整理とは?いつから始める?
生前整理とはいつ何をしたらいいのか、メリット・デメリットと合わせて具体的に解説します。また、遺品整理・老前整理といった類語との違いについても説明します。
生前整理とは?
生前整理とは、人生の終わりに備えて身の回りの物や財産などを自ら整理することです。「終活」の一環として行われます。
整理の目的は、使わない物や不要品を減らすだけではありません。自分のこれまでの人生を振り返り、自身にとって必要な物・大切な物を見極めて、これからの人生を充実させることも目的のひとつです。
■終活について詳しくはこちら
終活の意味や目的、始める時期と、具体的にやるべきことを7つにまとめて解説しています。
生前整理のメリット・必要性
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残された家族の遺品整理の負担を軽減する
生前整理を行うことで、残された家族が遺品整理をする際、労力や負担を減らすことができます。
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部屋や気持ちがすっきりする
不用品を処分することで、部屋や気持ちにゆとりが生まれます。
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保有財産を把握することで、相続の準備に役立てられる
保有財産をリスト化した「財産目録」を作成しておくと、相続の準備をスムーズに進めることができます。
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不測の事態に備えることができる
財産目録や重要書類などを家族に共有しておくと、万が一の時も安心です。
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今までの人生を振り返ることで、今後の人生を充実させることができる
自分が本当に大切にしたい物や人間関係を見つめ直すことで、残りの人生を悔いの少ないものにすることができます。
生前整理のデメリット・問題点
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時間や労力、お金がかかる
生前整理には時間がかかります。物品の仕分けには判断力や気力が必要となります。大型家具など粗大ごみの処分には、労力だけでなく処分費用もかかります。一度に行おうとすると途中で挫折してしまう人も多いため、日ごろから少しずつ進めていくことがポイントです。
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生前整理の悪徳業者が存在する
物品の整理や不用品回収の際、見積金額を大幅に上回る追加料金の不当請求や不法投棄を行う悪徳業者が問題になっています。業者が不法投棄を行った場合、物品の所有者である依頼主にも責任が及ぶ可能性があります。生前整理を業者に依頼する場合は、料金の安さだけでなく、信頼できる業者かどうか事前に判断することが重要です。
生前整理はいつから始める?
生前整理に決まったタイミングはございません。ただし、生前整理には、体力、気力、判断力、決断力が必要であるため、40代~50代までに始めることがおすすめです。生前整理が気になり始めた時、思い立った時が始めるのにベストなタイミングといえます。
かつて生前整理は、還暦を迎えて退職された方や、老後を意識し始めた方など、主に60代~70代以降に行うという印象が強いものでした。しかし近年では、必要最小限の物しか持たない「ミニマリスト」の暮らしが話題になり、20代~30代など若い世代で生前整理をし始める人も増加しています。
子どもが進学や結婚などで実家を離れる時、還暦を迎えた時、退職した時など、人生の節目に生前整理を始めることもおすすめです。
遺品整理、老前整理と何が違うの?
それぞれ似ている言葉ですが、実施する人、目的、実施のタイミング、実施内容に違いがあります。
生前整理 | 遺品整理 | 老前整理 | |
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実施する人 | 自分 | 遺族(主に家族) | 自分(または家族) |
目的 | ・死後に備える ・人生を見つめなおす ・家族の遺品整理の負担を減らす |
・亡くなった方の持ち物を整理、処分 ・心情の整理 |
・老後に備える ・人生を見つめなおす |
実施時期 | いつでも | 人が亡くなった後 | 高齢になる前 |
内容の一例 | ・身の回りの物品整理 ・デジタル機器、データの整理 ・財産整理 ・人間関係の整理 ・遺言書、エンディングノート作成 |
・遺品の整理・処分 ・相続手続き |
・身の回りの物品整理 ・デジタル機器、データの整理 ・人間関係の整理 |
遺品整理とは?
遺品整理とは、人が亡くなった後(一般的には四十九日の後)に家族が遺品を整理・処分することです。生前整理、老前整理を計画的に行っておくことで、本人の死後に遺品整理が進めやすくなり、家族の負担を軽減させることができます。
老前整理とは?
老前整理とは、老後に備え、高齢になる前(40代~50代頃まで)に自身の持ち物などを整理することです。生前整理は「死後に備える」というイメージが強いですが、老前整理は「安心した老後生活を実現する」という意味合いが強い言葉です。
生前整理でやるべきことと具体的な進め方
生前整理すべきものは、大きく分けて4種類あります。それぞれについて、具体的な整理の進め方と物品の処分方法について解説します。
生前整理のやることリスト
それぞれの具体的な整理の方法・進め方について解説します。
1. 身の回りの物品整理
生前整理は、まず片付けやすい「物品」の整理から取り掛かることをおすすめします。
身の回りの物を、必要な物と不要な物に分別し、不要な物は思い切って処分・売却します。本当に必要な物のみを残しましょう。いわゆる「断捨離」です。
「いつか使うかもしれない」としまい込んでいる物も、「1年以上使っていない物は不要」など、ルールを設けると仕分けしやすくなります。
思いのこもった品や身に着ける物など、本人以外は片付けづらい物品を優先的に整理するとよいでしょう。(思い出の品、写真、書籍、日記や手帳、食器、衣類など)
◆必要な物の例
- 現在使っている物
- 手元に残しておきたい物(思い出の品など)
- 誰かに残したい物(形見分けする物)
- 需要や価値がある物 など
◆不要な物の例
- 1年以上使用していない物
- 壊れている物
- 思い入れがない物 など
必要か不要か、判断に迷う物は一時的に保管場所を変え、時間をおいて考えるとよいでしょう。保管場所を移したままでも困らない・使用する機会がないようでしたら処分を検討しましょう。
物品の処分方法3選
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ごみとして処分する
不用品は、基本的にはごみとして処分します。価値のある物や必要としている人がいる物の場合は、贈与や売却を検討しましょう。
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必要な人へ贈与する
コレクション品や趣味の品など、必要としている人へ譲ったり寄付をしたりすることも処分方法のひとつです。
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売却する
状態の良い物や需要・価値のある物に関しては、売却することもできます。リサイクルショップ、古書店、フリマアプリ、インターネットオークション、不用品買取サービスなどを活用しましょう。
※貴金属、ブランド品、骨董品や美術品などは専門家に鑑定を依頼することをおすすめします。
2. デジタル機器やデータ、アカウント情報の整理
◆整理が必要な電子機器・デジタルデータ
- パソコン・スマートフォンなどの電子機器
- 電子機器やインターネット上に保存されているデータと情報
(画像・動画・メール・アドレス帳 など) - SNS、通販サイト、会員サイトなどのアカウント・会員情報
- 月額・年額サブスクリプションサービスなどの契約情報
上記は本人の死後に「デジタル遺品」となり、個人情報やプライバシーに関わるデータなどがインターネット上に残り続けるリスクがあります。そのようなリスクを軽減するためにも、デジタル機器・データの生前整理は必要です。
電子機器を処分する場合は、防犯上内蔵データの削除が必要です。電子機器内のデータは、完全に削除したつもりでも復元が可能な場合があります。データを完全削除できるソフトの利用や、データの削除と電子機器の処分を合わせて行っている業者に依頼するなど検討しましょう。
SNSやインターネット上のアカウント・会員情報の管理には、エンディングノートを活用しましょう。IDやパスワードをリスト化し記載しておくことで、情報を家族へ共有しやすくなります。死後、SNSの退会を希望する場合は、IDとパスワードを信頼できる人へ共有し、依頼しておきましょう。
※パスワードなど重要情報を記載したエンディングノートは、管理に気を付けましょう。
人に見られたくないデータは生前に削除するか、死後削除してもらうため家族や信頼できる人に事前に依頼しておきましょう。その際、パソコンやスマートフォンなど電子機器のロック解除方法も共有しておきます。
年額・月額のサブスクリプションサービスは、契約状況を家族に共有しておきましょう。本人の死後も知らないまま料金が引き落とされ続ける可能性があります。不要なサービスは見直し、生前に解約しておくと安心です。
■エンディングノートについて詳しくはこちら
エンディングノートの選び方・作り方や、書くべき8つの項目について解説しています。
3. 財産の整理、財産目録の作成
現在保有する財産を明確にするため、財産をリスト化した「財産目録」を作成することをおすすめします。残された家族が相続財産を調査する手間がなくなり、相続税の試算や相続トラブルの回避にも役立てられます。
- 現金、預貯金、株式等の有価証券
- 不動産(土地、建物 など)
- 動産(車、貴金属 など)
- マイナスの財産(各種ローン、未払金 など)
上記のような財産を、「相続させたいもの」「売却して現金にするもの」「生前贈与するもの」に分類し、相続させたい財産には遺言書を残しましょう。
また、相続には「相続税」、生前贈与には「贈与税」が課税されることがありますので、詳しくは税理士に相談されることをおすすめします。
財産整理で、不要な銀行口座やクレジットカードがあった場合は生前に解約しておきましょう。通帳や印鑑、貴重品、重要書類はなるべく一か所にまとめて、鍵をかけて保管しておくと安心です。
ネット銀行口座の預金や証券口座のインターネット取引による金融資産、暗号資産(仮想通貨)、電子マネーなどのデジタル資産には注意が必要です。遺族が発見できず宙に浮いてしまったり、後にトラブルになったりする可能性があります。デジタル資産の所持状況やID・パスワードなど、必要な情報をリスト化して家族に共有することが重要です。エンディングノートなども活用しましょう。
■相続について詳しくはこちら
相続の基礎知識と、財産目録の作成、遺言書の作成、戸籍謄本の準備、相続税対策の4点について詳しく解説しています。
4. 人間関係の整理(身辺整理)
物品の生前整理だけでなく、人間関係などの身辺整理も行っていきましょう。今後の人生に必要だと思う人間関係を大切にするため、義理で付き合っている人、苦手な人、ほとんど連絡を取らない人など、不要だと思う人間関係を見直します。
身辺整理の一環として、「年賀状じまい」も年々増加しているようです。年賀状じまいとは、翌年以降の年賀状を辞退する旨を記載した、最後に送る年賀状のことです。
自分の葬儀に呼んで欲しい友人・知人は、エンディングノートに連絡先などを記載し、家族に共有しておくことをおすすめします。
生前整理業者と費用の相場
整理する物が多すぎて自分や家族だけでは対処できない場合や、高齢・病気などで生前整理が困難な場合は、生前整理の専門家や専門業者、不用品買取業者に依頼することも一つの方法です。
費用は発生しますが、最小限の時間と手間で生前整理を終わらせることができます。
生前整理業者とは?
生前整理を支援する専門家、業者について解説します。
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生前整理の専門家(生前整理アドバイザー、整理収納アドバイザーなど)
生前整理のアドバイスやコンサルタント、片付けの補助を依頼することができます。
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生前整理業者(遺品整理業者、不用品回収業者)
高齢者施設へ入所する際など、部屋(または家)にある物を全て片付けなければならない場合、生前整理業者に依頼すると便利です。大型家具や粗大ごみなど、自分の力だけでは片付けづらい物もまとめて処分の依頼をすることが可能です。不用品買取を同時に行っている業者もあります。
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不用品買取業者
不用品を処分するだけでなく、査定・買取をしてくれます。値段の付かない物は別途処分費用が発生する場合もありますので注意が必要です。
専門家・業者に依頼した場合の費用相場は?
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生前整理の専門家(生前整理アドバイザー、整理収納アドバイザーなど)
【費用相場…日額10,000円ほど】
必要な人数の分だけ費用が追加になります。 -
生前整理業者(遺品整理業者、不用品回収業者)
【費用相場…1Kで30,000円~】
3LDKの一般的なファミリー向け住宅の場合は100,000円~500,000円程度が相場といわれています。
生前整理を専門家・業者に依頼した場合、費用が発生します。費用を抑えたい場合は、自分でも物品の処分や整理を進めておくことと、複数社から見積もりを取得することをおすすめします。
悪徳業者に注意・優良な業者選びのポイント
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必要な許可や資格を所持している
不用品の処分には「一般廃棄物収集運搬許可証」を持っているか、許可を持った業者に委託する必要があります。また、必須ではありませんが「遺品整理士」の資格を持ったスタッフが在籍しているとより安心です。
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対応が丁寧、口コミの評判が良い
問い合わせ時に丁寧に対応してくれる業者に依頼しましょう。また、インターネットでの口コミなども参考にするとよいでしょう。
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訪問した上で明瞭な見積書を提示してくれる
実際に現地に訪問し、見積書を提示してくれる業者を選びましょう。訪問に応じない場合、後に料金が追加になるトラブルが発生する場合があります。また、見積書に作業内容と金額が明瞭に記載されているか確認しましょう。
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作業実績が豊富
ホームページに実績が記載されているかチェックしましょう。作業前後の写真が掲載されているとより安心です。
生前整理の4つのポイント
生前整理する際、スムーズに進めるためのポイントや注意点について解説します。
1. 家族に生前整理していることを伝えておく
生前整理していることを家族と共有することで、必要に応じて協力してもらったり、家族間で終活について前向きに話せるようになったりします。
2. 前向きな気持ちで取り組む
自分の死後を想定すると、気持ちが落ち込んでしまうことがあります。生前整理は死後を想定した備えですが、今後の人生をより充実させるための活動でもあります。ポジティブな気持ちで取り組むことがおすすめです。
3. まとめてやらず、日ごろから進めていく
生前整理はまとめて行おうとすると大変な労力が必要になるため、普段から整理整頓や必要品の取捨選択をしていくことが重要です。年末の大掃除など、定期的に所持品を見直す機会を設けるとよいでしょう。
4. 処分に迷ったら後回しにする
処分に迷ったものは保管場所を変え、一度時間をおいてから考えましょう。思い出に浸ると一層処分しづらくなり、整理が思うように進まなくなる恐れがあります。
よくある3つの質問
生前整理に関する3つのよくある質問にお答えします。
Q1. 高齢者施設入居のため生前整理をしていますが、施設には持ち込めないものの処分することができない物はどうしたらいいでしょうか。
A. 少量であれば家族に預けるか、たくさんある場合や大型品の場合はトランクルームなどを活用しましょう。
施設の入居に伴う生前整理の場合、必要な物や手元に残しておきたい物以外は処分が必要になります。施設には持って行けないものの、処分することもできないという物は、トランクルームやレンタル倉庫に一時保管する選択肢もあります。普段手に取ることはほとんどなくなりますが、いつでも取り出せるという安心感が得られます。
Q2. 両親に生前整理を促したいですが、どのように勧めるべきでしょうか。
A. 両親と一緒に終活や生前整理を行うことがおすすめです。
両親に生前整理を促したい場合は、自ら率先して終活や生前整理をする姿勢を見せることで、終活に関する話題が広げやすくなります。一緒に終活をすると、話題や悩みが共有でき、相続についても話しやすくなるのでおすすめです。
また、無理に促したり自己判断で親の持ち物を処分したりしてしまうと後に大きなトラブルにつながりかねませんので、避けましょう。
思い出の品や写真など、思いがこもった物の整理には時間がかかるため、ゆっくり見守ることも大切です。
Q3. 生前整理でお仏壇やお墓が不要になった場合は、どのように片付けたらいいですか。
A. お仏壇の処分と墓じまいは、実績豊富なはせがわにご相談ください。
お仏像・お位牌といった礼拝品や墓石は、処分前に閉眼供養(魂抜き)をするなど、特殊な扱い方が必要な場合があります。はせがわでは不要になったお仏壇・お仏具のお引き取りやお墓じまいのサポートなど、ご供養に関して総合的にご相談いただけます。お気軽にお近くの店舗までお問い合わせください。
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この記事を監修した人
司法書士・行政書士法人オーシャン
横浜・渋谷・藤沢エリアを中心に、年間2,000件超の相続業務を担当する国内屈指の相続専門事務所。また、グループ内の株式会社では、相続遺言関連業務に特化した国内最大級の士業向け勉強会(相続遺言実務家研究会)を運営し、全国の士業に対する業務レクチャーも担当。
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