十三仏ってなに?いつ飾るの?
「十三仏」は、三十三回忌(さんじゅうさんかいき)までそれぞれの役割に応じて故人様を守り導いてくださる、13人の仏様のことです。追善供養として、掛軸(かけじく)の形態でお飾りされることが一般的です。読み方は「じゅうさんぶつ」になり、「十三佛」とも書きます。
■追善供養(ついぜんくよう)とは?
故人様の冥福を祈っておこなう供養のことで、死者の苦しみを取り除くはたらきがあるとされます。 お仏壇・お墓への日々のお参りや、初七日や四十九日などの法要、お線香や読経なども追善供養にあたります。
※浄土真宗においては、逝去後すぐに阿弥陀如来(あみだみょらい)の力で成仏できるという「他力本願」の考えがあるため、追善供養は不要とされています。
十三仏(じゅうさんぶつ)
もっと詳しく「十三仏」を知る
亡くなった方は7日ごとに生前の行いを元に裁判を受けるという十王(じゅうおう)信仰があります。中国ではじまった信仰で、閻魔大王(えんまだいおう)をはじめとする10人の裁判官がいるとされます。
各王を仏様の化身とし、十仏と考えられました。のちに実施される法要(七回忌・十三回忌・三十三回忌)が3つ増え、一般化しました。こうして日本独自の信仰として十三仏信仰が室町時代にできたとされています。初七日(しょなのか)から、弔い上げ(区切り)とされる三十三回忌までの13回の法要にあわせて、13の仏様・菩薩・明王様が故人様を助け、無事に成仏へ導くとされます。
現在も信仰されており、法要で掛軸などをお飾りするほか、十三仏詣として日本各地にある十三仏霊場がめぐられています。また寺院や公園の名前になっていることもあります。
十三仏を飾るタイミング
各仏様が導いてくださる初七日や四十九日をはじめとする各法要、命日やお盆・お彼岸などの仏教行事、お正月など節目のタイミングなど多くの場面でお飾りをされています。
各仏様が導く法要はこちらをご確認ください。
宗派による違いはある?飾らない宗派も紹介
十三仏をあしらった掛軸は、曹洞宗や天台宗など仏教の多くの宗派で飾られています。ここでは特徴のある宗派・飾らない宗派を紹介します。
真言宗は「真言十三仏」で飾る
真言宗では「真言十三仏」とよばれる、専用の掛軸を飾ります。通常の十三仏に加え、開祖である弘法大師(こうぼうたいし)を含む14の方が描かれています。また他の掛軸ではお釈迦様(おしゃかさま)を中心に描かれるのに対し、真言宗のご本尊である大日如来様(だいにちにょらいさま)が中心となります。
真言十三仏
日蓮宗・浄土真宗は飾らない
日蓮宗と浄土真宗では、十三仏のお飾りは基本的にしないとされています。
・浄土真宗…「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」を念じれば極楽往生(ごくらくおうじょう)すると考えられているため。追善供養の考え方はないとされる。
・日蓮宗…本尊である御曼荼羅(ごまんだら)に意味がこめられているため。
いつ、どの仏様が担当?各仏様も紹介
ここでは各法要で、どの仏様が助けてくださるのかを説明します。
十三仏の順番
十三仏は手前から順に描かれているとされます。デザインなどにより異なる場合もあります。
■如来と仏の見分け方
・如来(にょらい)…悟りを開いている。螺髪(らほつ)とよばれる丸い粒のある髪型・質素な衣が多い。
・菩薩(ぼさつ)…悟りを求めて修行をしている。修行中の釈迦がモデルとされ、豪華な装飾品をつけていることが多い。
十三仏と法要の早見表
十三仏 | 法要 | 命日から |
不動明王(ふどうみょうおう) | 初七日 | 7日目 |
釈迦如来(しゃかにょらい) | 二七日 | 14日目 |
文殊菩薩(もんじゅぼさつ) | 三七日 | 21日目 |
普賢菩薩(ふげんぼさつ) | 四七日 | 28日目 |
地蔵菩薩(じぞうぼさつ) | 五七日 | 35日目 |
弥勒菩薩(みろくぼさつ) | 六七日 | 42日目 |
薬師如来(やくしにょらい) | 七七日(四十九日) | 49日目 |
観世音菩薩(かんぜおんぼさつ) | 百箇日 | 100日目 |
勢至菩薩(せいしぼさつ) | 一周忌 | 1年目 |
阿弥陀如来(あみだにょらい) | 三回忌 | 2年目 |
阿閃如来(あしゅくにょらい) | 七回忌 | 6年目 |
大日如来(だいにちにょらい) | 十三回忌 | 12年目 |
虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ) | 三十三回忌 | 32年目 |
命日を1日目とし、百箇日までは実際の日数が法要となります。
三回忌からは数え年になります。そのため【亡くなった年数+1】の数字を使用した法要名となっています。
各仏様を紹介
各仏様について説明します。また仏様を表す梵字や真言も紹介します。仏様の姿と梵字を画像でも載せていますので、掛軸がある場合は照らし合わせてみましょう。
・梵字(ぼんじ)…サンスクリット語を表現する文字のこと。一文字で各仏様を表す。
・真言(しんごん)…サンスクリット語でマントラ(Mantra)のこと。「真実の言葉」「秘密の言葉」の意味。声に出すことで功徳がえられるとされる。十三仏の真言を「十三仏真言」ともいう。
①不動明王(ふどうみょうおう)|初七日
亡くなったばかりで、故人様自体が遠い冥界に旅立つ覚悟もまだ不十分です。現世に未練を持たないように、不動明王の右手に持つ剣で迷いを切り払い、左手の縄で冥界へと導く役割をします。
【梵字の読み方】カン
【真言】ノウマク サンマンダ バザラ ダン センダ マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン
【十王】秦広王(しんこうおう)
②釈迦如来(しゃかにょらい)|二七日
仏教の開祖です。約2500年前にインドの菩提樹(ぼだいじゅ)の下で、世の中の道理、自然の摂理を体得し、一切の迷いを離れて悟りを開きました。
【梵字の読み方】バク
【真言】ノウマク サンマンダ ボダナン バク
【十王】初江王(しょこうおう)
③文殊菩薩(もんじゅぼさつ)|三七日
「三人よれば文殊の知恵」といわれるように知恵の仏様です。
右手の剣は「諸戯(しょけ)を絶つ」といわれ、愚かさを切る智慧の剣です。
【梵字の読み方】マン
【真言】オン アラハシャ ノウ
【十王】宗帝王(そうていおう)
④普賢菩薩(ふげんぼさつ)|四七日
仏様の慈悲の活動を「普賢の行願(ぎょうがん)」というように、救いの行の菩薩様です。
【梵字の読み方】アン
【真言】オン サンマヤ サトバン
【十王】五官王(ごかんおう)
⑤地蔵菩薩(じぞうぼさつ)|五七日
六道衆生を救う仏様です。六道とは地獄・餓鬼道・畜生道・修羅道・人道(人間界)・天道(天界)の6つです。
すべての生きとし生けるものに救いの手をさしのべます。
【梵字の読み方】カ
【真言】オン カカカビ サンマエイ ソワカ
【十王】閻魔王(えんまおう)
⑥弥勒菩薩(みろくぼさつ)|六七日
「第二の釈迦」といわれます。未来の世にお釈迦様と同じ如来となるため「未来仏」ともいわれます。故人様の煩悩を取り除きます。
【梵字の読み方】ユ
【真言】オン マイタレイヤ ソワカ
【十王】変成王(へんじょうおう)
⑦薬師如来(やくしにょらい)|七七日(四十九日)
左手の薬壺が示すとおり、健康を守ってくださる仏様です。
この四十九日をもって忌が明け、残された家族は平常生活に戻るとされます。
【梵字の読み方】バイ
【真言】オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ
【十王】太山王(たいざんおう)
⑧観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)|百箇日
慈悲の菩薩様です。願いに応じてさまざまに姿を変え、見守ってくださいます。
【梵字の読み方】サ
【真言】オン アロリキャ ソワカ
【十王】平等王(びょうどうおう)
⑨勢至菩薩(せいしぼさつ)|一周忌
智慧の菩薩様です。頭の宝冠に水瓶がついており、そこから智慧の力をふりそそぎます。念仏をし、人々の苦しみを解消します。
【梵字の読み方】サク
【真言】オン サンザン ザンサク ソワカ
【十王】都市王(としおう)
⑩阿弥陀如来(あみだにょらい)|三回忌
西方の極楽浄土の教主です。極楽の住人を正しく教化するため説法に努めています。
【梵字の読み方】キリーク
【真言】オン アミリタ テイセイ カラ ウン
【十王】五道転輪王(ごどうてんりんおう)
⑪阿閃如来(あしゅくにょらい)|七回忌
東の浄土におり、「無動如来」ともいわれます。動じない堅固な意志をもち、魔を下す強い力を持っています。
【梵字の読み方】ウン
【真言】オン アキシユビヤ ウン
【十王】蓮上王(れんじょうおう)
⑫大日如来(だいにちにょらい)|十三回忌
天地宇宙の中心の仏様です。
一切衆生を深い優しさと限りない厳しさに満ちた大いなる懐で抱きます。
【梵字の読み方】バン
【真言】オン バサラ ダドバン
【十王】抜苦王(ばっくおう)
⑬虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)|三十三回忌
大空のこころを体現する菩薩様です。
平穏に安住することなく菩薩道を実践し続けることを表すため、十三仏のしんがりとして登場します。
【梵字の読み方】タラク
【真言】ノウボウ アキャシャキャラバヤ オンアリキャ マリボリ ソワカ
【十王】慈恩王(じおんおう)
どんな十三仏のお飾りがある?掛軸など紹介
法要やお彼岸・お盆などの仏教行事で、十三仏はお飾りをします。葬儀後すぐであれば祭壇の近く、四十九日以降はお仏壇の近く、お盆ではお盆飾りの近くにお飾りをしましょう。
サイズやデザインも豊富にありますので、お部屋にあわせてご用意をしましょう。
どの種類を用意すべきかお悩みの場合は、お近くの はせがわ店舗で相談も可能です。
はせがわ で相談をする>>
掛軸タイプ
壁にかける伝統的なタイプです。縦が3尺(約90㎝)から4尺(約㎝121)の大きさがよくご用意されています。モダンなデザインや色味の掛軸もあります。
フックのついた格子背景を用意するとお飾りもしやすくなります。
掛軸タイプ
格子背景で十三仏を飾る
掛軸や写真などをかけるため、3つのフックがあります。高さも2段階に調整が可能です。
スタンドタイプ
場所がない、壁にかけることが難しい場合には、スタンドタイプがおすすめです。
コンパクトで台の上に置いてお飾りができます。
スタンドタイプ
木製のフレームにはいっています。表面はアクリル板で保護されておりお手入れも簡単です。
■お掃除
導いてくださる大切な仏様ですので、ほこりがかぶらないようにお手入れをしましょう。毛払い(毛はたき)で、やさしく払います。水ぶきなどはしないようにしましょう。
毛払い
守り本尊ってなに?自分の干支を確認
十三仏には<宗派による違い>もありますが、「守り本尊」というかたちであれば宗派関係なく仏様をお飾りすることもあります。日蓮宗や浄土真宗の方でもお持ちになることがあります。
東西南北を区切った12の方位に、それぞれを守る守護物仏がいるとされ、そこに十二支の考えが結びついたものが「守り本尊」です。
お仏像以外に、持ち運びのできるストラップタイプなどあります。
干支 | 守り本尊 |
子 | 千手観音菩薩(せんじゅかんのんぼさつ) |
丑・寅 | 虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ) |
卯 | 文殊菩薩(もんじゅぼさつ) |
辰・巳 | 普賢菩薩(ふげんぼさつ) |
午 | 勢至菩薩(せいしぼさつ) |
未・申 | 大日如来(だいにちにょらい) |
酉 | 不動明王(ふどうみょうおう) |
戌・亥 | 阿弥陀如来(あみだにょらい) |
守り本尊(ペンダントトップ)