お彼岸とは?
お彼岸とは、「春分の日・秋分の日を中日とした7日間」のことです。現代では、ご先祖様への感謝の気持ちを込めて供養を行い、かつ仏教の教えに従って精進すべき時期とされています。
仏教行事は他国から伝来するものと考えられがちですが、お彼岸はインドや中国には見られない日本独自の風習で、日本古来の信仰と仏教的な解釈が合わさって生まれたとされています。
また、自然の恵みに感謝し、ご先祖様への思いをはせる日であり、「日願(ひがん)」とよばれていたものが「彼岸」と合わさったとの説もあります。
「お彼岸」の語源は?
サンスクリット語の「paramita(波羅蜜多、パーラミタ)」です。漢訳で「至彼岸(とうひがん)=彼岸に至る」という意味です。
仏教伝来により、日本では仏教の教えに従って精進する(修行を行う)ことで、煩悩や生老病苦に満ちた世界を脱して悟りの境地に至ることができるとされました。この此岸と彼岸のはざまに流れているのが、あの世とこの世を隔てる「三途の川(さんずのかわ)」です。
- 現世…此岸(しがん)=こちらの岸、欲や煩悩にまみれた世界
- 悟りの世界…彼岸(ひがん)=向こう岸、仏様の住むお浄土の世界
■なぜお彼岸は7日間あるの?
中日(春分の日・秋分の日)はご先祖様のご供養に集中し、前後の6日間で、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」と呼ばれる悟りの世界へ達するための修行を、1日につき1項目ずつ実行するためと言われています。
お彼岸について詳しくはこちら
お彼岸の意味や日程、六波羅蜜の修行、4つのやるべきことなど、お彼岸の基本を解説します。
彼岸法要とは?どこで行うべき?
法要とは、故人様の冥福を祈ってご供養をする仏教の儀式のことで、僧侶による読経や参列者による焼香がおこなわれます。
お彼岸時期には、主に以下のような理由から、ご自宅のお仏壇へのお供えやお墓参り、法要など様々なご供養を行います。
■お彼岸時期にご供養を行う理由
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この世とあの世の距離が近くなるため
お彼岸時期は、昼と夜の長さが同じになることから、この世(昼)とあの世(夜)の距離が近付く時期であり、故人様への想いが通じやすくなるとする考え。 -
太陽が真西に沈む時期のため
お彼岸時期は太陽が真西にまっすぐ沈むため、西方の遥か彼方にある極楽浄土(西方浄土)への道しるべができ、お浄土との距離が最も近くなる特別な時であるという考え。 -
「八王日」には善行を積むべきという考えのため
「春分」や「秋分」などの季節の代わり目のとなる日のことを「八王日(はちおうにち)」と呼ぶ。閻魔大王はこの期間に人々の行いを観察・記録するため、八王日に善行を積むとよいという考え。
この項目では、お彼岸法要の歴史や、法要をどこで行うべきかについて解説いたします。
彼岸法要はいつからあるの?
日本最古のお彼岸は、平安時代初期に行われた、無実の罪を訴えて死去した早良親王(さわらしんのう)の怨霊を鎮めるための祈りの行事だとされています。平安時代に編纂された「日本後紀」では、延暦二十五年(806年)、春分と秋分を中心とした前後7日間にわたり、早良親王のために全国の国分寺で読経がおこなわれたとの記載があります。
その後、「彼岸会(ひがんえ)」という行事として、春分・秋分を中心とする七日間に開催されるようになり、江戸時代にかけて年中行事として民衆に定着したとされています。
彼岸法要はどこでするべき?
お彼岸の法要は大きく分けて2種類あり、地域やお寺の考えによっても異なりますが、お寺の敷地内で行う「合同法要」と、ご自宅に僧侶をお招きして行う「個別法要」があります。
合同法要がある場合はハガキなどで事前告知を行うお寺もあるようですが、どちらの法要を行うか不明な場合は、まずはお寺にご連絡を入れてご相談するといいでしょう。
もしご自宅で個別法要を行う場合には、出向いてくださる僧侶に対するお布施や御車代(交通費)、お仏壇前などにお膳やお菓子、お花などのお供えを用意しておきましょう。また、もし可能であればお経を読む際に使用する「経机(きょうづくえ)」や「木魚(もくぎょ)」のご用意も行うと丁寧です。
※事前に何を用意していいか分からない場合は、お寺に直接ご確認いただいても失礼には当たりません。
お盆やお彼岸・ご法事の時に仏さまに精進料理をお供えする器を、「御霊具膳(おりょうぐぜん)」や「御霊供膳(ごりょうぐぜん)」と呼びます。近年は、ご準備しやすいフリーズドライの精進料理セットも人気です。
お焼香(抹香)を焚くための香炉を「焼香炉(しょうこうろ)」と呼びます。灰を入れて、その上に熱した炭を置き、上から抹香を振り掛けて使用します。
お布施の金額相場は?書き方・渡し方マナーも解説
お経をあげていただく際には、お寺に対してお布施(心付け)をお渡しします。この項目では、包む金額の目安(相場)、表書きの書き方、実際の渡し方といったお布施に関するマナーを解説いたします。
お布施の金額相場
お寺によっては法要のお布施額を明確に定めている場合もありますが、もし分からない場合は、直接お問い合わせしても失礼にはあたりません。ただし、もし「お気持ちで」と言われた場合には以下の金額を目安にご用意いただくと良いでしょう。
・ご自宅で個別法要を行う場合
3万円~5万円程度+御車代(交通費)
※交通費は、お寺からご自宅までの距離にもよりますが、 3,000円~5,000円程度が目安となります。
・お寺での合同法要に参加する場合
3,000円~1万円程度
お布施の包み方・書き方
お布施の包み方は大きく分けて2種類あります。現金を半紙で包み、その上から「奉書紙(ほうしょし・ほうしょがみ)」と呼ばれる和紙に包む形が最も丁寧ですが、もし難しい場合には、無地の白封筒に入れてお渡しする形でも問題ございません。
ただし、封筒を使用する場合には、不幸の重なりを連想させる二重封筒は使わないように注意しましょう。
表書きの仕方
封筒の表に、「御布施」の表書きと施主の名前を記入する形が基本です。仏壇仏具専門店や文具店では、最初から御布施の印字がされた封筒も販売しています。
記入する際は、毛筆または筆ペンを使用し、薄墨ではなく通常の濃い黒色を使st用します。
お札の向きは、肖像画を封筒の正面・肖像が上側に来るようにして入れます。
裏書き(氏名や金額など)の仕方
連絡先(住所や電話番号)と金額は、封筒裏側の左下に記載します。中袋があるタイプの場合は外包みには書かず、中袋の表面に金額、裏面に住所や氏名などを書きます。
金額(数字)を書く際は、縦書きかつ旧字体の漢数字を使用し、頭に「金」・末尾に「圓(えん)」とつけるのがマナーです。
アラビア数字 | 漢字(旧字体) |
3,000円 | 金参阡圓 |
5,000円 | 金伍阡圓 |
10,000円 | 金壱萬圓 |
30,000円 | 金参萬圓 |
50,000円 | 金伍萬圓 |
100,000円 | 金壱拾萬圓 |
お布施の渡し方
お布施は、「袱紗(ふくさ)」と呼ばれる布にお布施を入れて持ち運びます。
住職にお渡しする際には、お布施を素手で直接お渡しするのは失礼にあたりますので、「切手盆」や「名刺盆」と呼ばれる黒塗りのトレーに載せて、ご住職から文字が読める向きにしてお渡しするのがマナーです。「お勤めありがとうございました」「お納めください」など、お経をあげていただいた感謝の気持ちが伝わる一言も添えると丁寧です。
お金を持ち運んだり包んだりする際には、「袱紗(ふくさ)」を使用します。色・形ともに様々な種類がございますが、紫色のふくさは、冠婚葬祭どちらでも使用できて便利です。また、簡単に包めるポケット付きタイプや、切手盆の代わりにもなる台付きタイプなどもございます。
塔婆とは?立てる際のお布施相場は?
「塔婆(とうば)または「卒塔婆(そとば)」とは、故人の冥福を祈ってお墓の脇や後部に立てかける木の板のことです。塔婆を立てることを塔婆供養とも呼び、故人様の冥福を祈る意味合いがあります。
塔婆を用意するタイミングに決まりはありませんが、お盆やお彼岸をはじめ、年忌法要や納骨などの節目ごとに立てる場合が一般的です。もし立てる際は、事前にお寺への依頼が必要になります。
※塔婆による供養は大半の宗派でおこなわれますが、浄土真宗では「亡くなった後はすぐにお浄土に行ける(即身成仏)」と考えられているため、お塔婆による追善供養は基本的に不要となります。
また、九州は供えること自体が珍しいなど、地域によっても大きく異なる場合があるほか、一部民間霊園などでは塔婆のお供えが不可とされている場合もありますので注意が必要です。
塔婆のお布施相場
塔婆を立てる際のお布施相場も、法要のお布施と同様に金額が定められている場合もありますが、もしお気持ちでと仰っていただいた場合は、3,000円~1万円程度が一般的です。
お渡しする際は、分かりやすいようにお布施とは別の袋に包み、表書きは「塔婆料」や「卒塔婆料」と記載する形が一般的です。
お彼岸法要に参加する際の服装マナー
お彼岸法要はお悔みごとではありませんので、一般的には喪服ではなく平服を着用いただく形で問題ございません。
ただし、平服は普段着という訳ではなく、黒や茶、グレー、紺などの落ち着いた色で、スーツやワンピースなどある程度フォーマルな服装を指しますので注意が必要です。
これだけは気を付けたい、避けるべき服装
以下に、法要参加時に避けるべき服装やポイントをご紹介いたします。このほかにも、「亡くなってから日があまり経っていない場合には喪服を着るべき」といった習慣がある地域もございますので、悩んだ際は親族とご相談の上で服装を検討いただくと安心です。
- 派手な色味やだらしなさを感じさせるもの
- 露出の多いもの
- 毛皮(ファー)や革製品の服やカバン
※殺生を連想されるものになるため。
お彼岸にはお墓参りをしましょう
先祖供養に適した時期であることから、お彼岸の時期にはお墓掃除とお墓参りの風習があります。
特にお子様と一緒にお墓参りに行くことは、ご先祖様を敬う気持ちを通して、人を大切にする気持ちを育てることにも繋がるといわれています。
お墓参りに行くタイミングは、お彼岸の期間中であればいつでも問題ありませんが、あの世との距離が最も近付く日であることから、お彼岸の中日(春分の日」・秋分の日)を目安に行くのが最適とされています。
また、なるべく日が出ているうちの時間帯が望ましいとされていますので、基本的には午前中、もしくは午後の早い時間に行かれるとよいでしょう。
もしタイミングが合わず、お彼岸時期のお参りが難しい場合には、別日でのお参りでも問題はございません。
お墓参りのマナーはある?
お彼岸時期でも通常のお参りと同様に、大まかには【お墓掃除をする→お供えをする→お線香を焚いて合掌する→お供えを改修して後片付けをする】の4手順で行っていただくといいでしょう。
当日の服装についても、法要などのかしこまったタイミングでない限りは、礼服ではなく普段着で構いません。
お掃除をする、足場がよくないなどの可能性があるため、動きやすい服装や、暑さ・寒さ対策ができる服装が望ましいでしょう。ただし、帽子をかぶる場合は合掌の際には外すように注意しましょう。
■詳しいお墓参りの手順
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本堂にお参りをする
(常時解放してない場合もあります。その場合は一礼をしましょう。) - 墓所の掃除をする
- 花立に仏花を供える
- お供えやお菓子を供える
- お線香に火を灯す
- 故人様と縁の深い人からお参りをする
- お供えや掃除で出たゴミを持ち帰る
お墓参り時の持ち物
お墓参りの持ち物も通常のお参りと変わりはありませんが、一般的には、仏花、お線香、数珠、ローソク、マッチ(ライター)、ゴミ袋、お供え、手桶(共用使用可能のものがない場合)などを持参するのが一般的です。もし敷地内や近隣に売店がある場合は、そちらで購入するのもよろしいでしょう。
お墓参りの基本について詳しくはこちら
お墓参りに適した時期や時間帯、正しい作法など、お墓参りの基本をお仏壇のはせがわが解説します。
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お彼岸とは、春(3月)と秋(9月)の年2回に行われる仏教行事です。このページでは、お彼岸の意味や具体的なお彼岸日程、4つのやるべきことなど、お彼岸の基本を解説しています。
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