そもそも浄土真宗とは?
仏教では、基本的にどの宗派でも共通したデザインのお仏壇や仏具を使用できますが、浄土真宗では宗派専用の仏壇仏具があり、その種類やデザインには独自の特徴があります。
この項目では、浄土真宗における仏壇仏具の主な特徴を4つに分けてご紹介します。また、浄土真宗の基本的な教えや、お仏壇の置く向きについても解説しています。
浄土真宗とは?
浄土真宗は、親鸞聖人(しんらんしょうにん)を開祖とする日本最大の仏教宗派のひとつで、「阿弥陀如来(あみだにょらい)を信じる心(信心)」によってすべての人が救われると説く、「他力本願(たりきほんがん)」の教えを特徴としています。
京都の西本願寺を本山とする「浄土真宗本願寺派(お西)」と、東本願寺を本山とする「真宗大谷派(お東)」を中心に、「高田派」「仏光寺派」などの八派があり、これらを総称して「真宗十派」と呼ばれています。本堂や儀式の形式に違いはあるものの、親鸞聖人の教えを受け継ぐ点は共通です。
浄土真宗におけるお仏壇は、「亡くなられた方の魂はすぐに極楽浄土へ往生する」という教えに基づき、故人様を祀るための位牌を用いず、ご本尊である阿弥陀如来(あみだにょらい)を祀り、信仰と感謝の心を捧げる場としての役割があります。
浄土真宗に適したお仏壇の向き
お仏壇の置き方には絶対的な決まりはなく、ご家族がお参りしやすい場所を選ぶことが最も大切です。
ただし、浄土真宗では、西の極楽浄土に阿弥陀如来がいらっしゃるとされる「西方浄土説(さいほうじょうどせつ)」に基づき、お仏壇を東向き(お参りする際に西を向く形)に配置するのが良いとする考えもあります。
■仏壇の配置について詳しくはこちら
仏壇配置に決まりはある?向き・置き場所
新築やリフォーム、引越しなどの理由からお仏壇の買替えを検討している方に向けて、お仏壇を置く向きや適した置き場所、避けるべき場所など仏壇配置の基本を解説します。
浄土真宗のお仏壇の飾り方|モダン仏壇ではどう飾る?
浄土真宗のお仏壇のお飾りは、宗派ごとに細かい違いがあります。
本項目では、浄土真宗本願寺派(西本願寺)・真宗大谷派(東本願寺)の飾り方を中心に、写真付きで具体的に解説します。また、近年人気が高まっているモダン仏壇を使用した飾り方や、自宅で法要を行う際のお飾りについても触れています。
宗派別(西・東・高田派)のお飾り方法
浄土真宗のお仏壇は、基本的なお飾り方法は共通していますが、宗派ごとに使用する仏具や配置に細かな違いがあります。
以下では、浄土真宗本願寺派(お西)と真宗大谷派(お東)の正式なお飾り方法と、普段のお飾り方法(簡易版)をご紹介します。
浄土真宗本願寺派(お西)の飾り方
【正式なお飾り】
最も重要なお仏具である香炉・花立・火立の三つは、お仏壇の中央へお飾りします。打敷を敷いた上にまず香炉を中心に置き、その両脇に花立・火立をそれぞれ対に並べます。
天井からは瓔珞・輪灯を吊り下げます。お茶は供えず、ご本尊の前にお仏飯をひとつ、華瓶1対に橙を挿しお水をお供えし、お餅や落雁をさしあげる供笥を1対、それぞれお飾りします。
【普段のお飾り】
普段のときは簡易なお飾りをします。打敷は普段は外し、供笥もお供えがないときにはしまっておきます。
お仏飯はご本尊の前ひとつだけで両脇のお仏飯は略して結構です。中段の花立、火立ても一対の必要はなく、中央に香炉、右に火立て、左に花立と略してもかまいません。この飾り方は小さなお仏壇にも適用します。
実際のお飾り例
■上置き仏壇のお飾り例
■床置き仏壇のお飾り例
真宗大谷派(お東)の飾り方
【正式なお飾り】
最も重要なお仏具である香炉・花立・火立の三つは、お仏壇の中央へお飾りします。打敷を敷いた上に香炉を中心に置き、右に火立、左に花立を並べます。
天井からは輪灯と瓔珞(ようらく)と呼ばれるお飾りを吊り下げます。お茶や水は供えず、ご本尊の前にお仏飯を2つ、華瓶1対に樒(しきみ)を挿してお水をお供えし、お餅や落雁をさしあげる供笥を1対お飾りします。
【普段のお飾り】
普段のときは簡易なお飾りをします。打敷は普段は外し、供笥もお供えがないときにはしまっておきます。お仏飯はご本尊の前ひとつだけに略して結構です。
この飾り方は小さなお仏壇にも適用します。
お西特有の鶴亀のデザインの火立は、置く向きに決まりがありますので注意しましょう。
一般的に、鶴の口ばしは右開き、亀(贔贋)の尻尾は手前向き、火立の芯も実が手前、つぼみが内側、葉は外側になるようにお飾りします。
実際のお飾り例
■上置き仏壇のお飾り例
■床置き仏壇のお飾り例
真宗高田派の飾り方
浄土真宗には、代表的な二派(浄土真宗本願寺派・真宗大谷派)以外に、「真宗高田派」と呼ばれる分派も存在します。
真宗高田派におけるお仏壇のお飾りは、他の分派とは異なり、お位牌をお祀りしても良いとされている点が大きな特徴です。また、掛軸の配置にも違いがあり、一般的には以下どちらかのパターンでのお飾りを行います。
- 【パターン①】左:十字九字合輻(じゅうじくじごうふく)、中央:阿弥陀如来、右:親鸞聖人
- 【パターン②】左:九字名号、中央:阿弥陀如来、右:十字名号
浄土真宗本願寺派・真宗本願寺派のどちらも親鸞聖人の掛軸をお祀りしますが、宗派によって親鸞聖人の絵像の向きが異なりますので注意が必要です。
浄土真宗本願寺派は親鸞聖人が左向き、真宗高田派は親鸞聖人が真正面を向いているタイプを選びましょう。
自宅で法要する際のお飾りはどうすればいい?
浄土真宗では、普段は簡易なお飾りを行い、法要やお盆などの特別なタイミングには正式なお飾りをするのが一般的です。
ご自宅で四十九日法要などを執り行う場合には、通常のお飾りに加えて、香炉・火立・花立の下に「打敷(うちしき)」を敷き、「供笥(くげ)」と呼ばれるお供え台にお餅や落雁をお供えします。
※正式なお飾りについて詳しくは、以下の項目をご参照ください。
浄土真宗本願寺派(お西)の飾り方はこちら>>
真宗大谷寺派(お東)の飾り方はこちら>>
モダンな仏壇仏具を使用する場合のお飾り方法
浄土真宗では金仏壇でのお祀りが基本ですが、お寺に確認して問題がない場合には、モダンなお仏壇を使用することも可能です。この場合、宗派専用の仏具ではなく、モダンデザインのお仏具をお選びいただいても問題ありません。
ただしその場合にも、位牌ではなく過去帳を使うなど、浄土真宗の基本に沿ったお飾りを心がけましょう。
以下に、モダンな仏壇仏具を使用したお飾り例をご紹介します。
■モダンな仏壇仏具を使用する場合のお飾りイメージ
- 一段目:中央にご本尊、両脇に脇仏を祀ります。ご本尊の前にはご飯を1つと、しきみを挿した華瓶を一対お供えします。
- 二段目:見台に載せた過去帳を祀ります。
- 三段目:中央に香炉・火立・花立(三具足)を並べ、右側におりんを置きます。
※浄土真宗ではお茶・お水のお供えは不要なため、湯呑はお飾りする必要はありません。
はせがわでは、浄土真宗のお仏壇で使用するお仏具をセットにした、仏具セット付き仏壇も各種お取扱いしています。初めてで何をご用意していいかお悩みの方にもおすすめです。
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浄土真宗の仏壇仏具の特徴
浄土真宗では、他の宗派とは異なり、お仏壇や仏具に対していくつか特有の決まりがあります。この項目では、浄土真宗の仏壇仏具における主な特徴を4つご紹介します。
特徴①お仏壇のデザインは「金仏壇」が基本
■浄土真宗本願寺派(お西)の金仏壇
■真宗大谷派(お東)の金仏壇
浄土真宗では、黒塗りに金箔の装飾が施された「金仏壇(きんぶつだん)」を使用するのが一般的です。お寺の造りを忠実に再現した、伝統的な形式のお仏壇です。
ただし、同じ金仏壇でも宗派によって宮殿の柱のデザインに違いがあり、浄土真宗本願寺派(お西)では金色(金箔張り)の柱、真宗大谷派(お東)では黒い漆塗りの柱が特徴です。それぞれモチーフとしているお堂が異なるため、造りも異なります。
特徴②ご本尊・脇仏(脇侍)は基本的に掛軸をお祀りする
お仏壇の最上段には、中央には宗派の信仰の対象である「ご本尊」、その左右には補佐的な役割を果たす菩薩や名号(仏の教えを文字で表したもの)である「脇仏(わきぶつ)・脇侍(わきじ)」をお祀りする形が基本です。
他の宗派では、本尊は仏像、脇仏は掛軸の形式でお祀りする形が一般的ですが、浄土真宗ではすべて掛軸形式でお祀りするのが特徴です。
※場合によっては、ご本尊のみ掛軸ではなくお仏像をお祀りすることもあります。その際は、木仏点検と呼ばれる検査に合格し、本山の許可を得た「点検仏像」をお祀りします。
■浄土真宗本願寺派(お西)のご本尊・脇仏
- ご本尊:阿弥陀如来(あみだにょらい)
- 脇仏(右):親鸞聖人(しんらんしょうにん)…浄土真宗のご開祖
- 脇仏(左):蓮如上人(れんにょしょうにん)…真宗を全国に広めた中興の祖
■真宗大谷派(お東)のご本尊・脇仏
- ご本尊:阿弥陀如来(あみだにょらい)
- 脇仏(右):十字名号(じゅうじみょうごう)…阿弥陀如来の徳を讃える名号
- 脇仏(左):九字名号(くじみょうごう)…私たちの邪念を絶つ動きを表す名号
他宗派では、市販の仏像や掛軸を購入し、その後「魂入れ」の儀式をお寺に依頼するのが一般的ですが、浄土真宗では菩提寺を通じて、ご本尊の掛軸を本山から授与いただくことが推奨されています。
それぞれ、浄土真宗本願寺派(お西)では「法物(ほうもつ)」、真宗大谷派(お東)では「授与物(じゅよぶつ)」と呼ばれています。
本山から掛軸を授与いただく場合には特段の儀式は不要ですが、もしお寺のご意向で市販の掛軸を使用する場合には、「入仏式(にゅうぶつしき)」や「御移徙(おわたまし・ごいし)」と呼ばれる法要が必要です。
※浄土真宗の入仏法要について詳しくは <こちら>の項目をご参照ください。
特徴③位牌ではなく、「過去帳」や「法名軸」を使用する
他の宗派では、ご家族が亡くなると故人様の象徴として「位牌」を作り、お仏壇にお祀りします。一方、浄土真宗では位牌を用いず、代わりに「過去帳」や「法名軸」と呼ばれる仏具をお仏壇にお祀りする形が基本です。
ただし、お寺や地域のお考えによっては、浄土真宗でも位牌を使用してよいとするケースもあります。もし不安な場合は、事前にお寺へご確認いただくことをおすすめします。
過去帳
過去帳は、複数の故人様の法名(戒名)を記載することができる帳面タイプの仏具です。
他の宗派でも、ご先祖様の記録や家系図(系譜)のような用途や、複数のお位牌をまとめるためなどに使用されますが、主に浄土真宗で用いられます。専用の見台(けんだい)に載せて、お仏壇の中にご安置する形が一般的です。
法名軸(ほうみょうじく)
「法名軸ほうみょうじく)」は、無地の掛軸に故人様の法名や没年月日を記し、お仏壇内部の側面に掛けてお祀りするお仏具で、主に浄土真宗でのみ用いられます。
法名軸のご用意は、お寺様からいただいた「院号本紙(法名を記載した紙)」を表装して「院号表装」に仕立てる形式と、市販の無地の掛軸に法名を記載する形式があります。どの方法が適切かはお寺によって異なりますので、まずは菩提寺にご確認ください。
市販品を使用する場合は、仏壇仏具店に記入を依頼することも可能です。はせがわでも法名軸のご記入を承っておりますので、お近くの店舗までご相談ください。
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特徴④宗派専用の仏具を使用する
浄土真宗では、他の宗派とは異なる独自のお仏具を使用します。また、同じ浄土真宗の中でも、浄土真宗本願寺派(お西)と真宗大谷派(お東)で、お仏具のデザインに違いが見られます。
以下に、浄土真宗の代表的なお仏具をそれぞれご紹介します。
三具足(みつぐそく)
■浄土真宗本願寺派(お西)の三具足
■真宗大谷派(お東)の三具足
「三具足(みつぐそく)」は、花立・香炉・火立の3つの仏具の総称で、お仏壇でのお参りに欠かせない重要なお仏具です。
これらのお飾り(お供え)は「仏の三大供養」とも呼ばれ、仏様への礼拝で最も重要なものとされています。
※花立と火立を対で配置する「五具足(ごぐそく)」形式でお飾りする場合もあります。
浄土真宗では、実際にお参りで使用する三具足とは別に、仏様の前にお飾りするために三具足をもう1組用意するのが正式なお飾りです。
仏様用の三具足は宗派ごとに特徴があり、浄土真宗本願寺派(お西)では黒色や宣徳色(こげ茶に近い色味)で彫刻が施されたデザイン、真宗大谷派(お東)では金色で火立に鶴亀の飾りが施されたデザインが一般的です。
仏様用のお飾りは、現在ではお仏壇の中のお飾りや、供養の象徴的な意味合いで置かれるケースが増えています。
その場合には、本物のロウソクではなく木製の朱塗りロウソクが用いられることもあります。
香炉
■浄土真宗本願寺派(お西)の香炉
■真宗大谷派(お東)の香炉
浄土真宗では、お参りで実際に使用する香炉として、青磁製の「土香炉(どこうろ)」を使用します。宗派によってデザインが異なり、浄土真宗本願寺派(お西)では丸みを帯びた形の「玉香炉」、真宗大谷派(お東)では飾りが施されたデザインの「透かし香炉」が用いられます。
浄土真宗でお線香を焚く際は、お線香を2~3本に折り、火が左側になるようにして香炉に横向きに寝かせるあげ方が基本です。
■お線香のあげ方について詳しくはこちら
お線香のあげ方を徹底解説
ご自宅でのお参りやお悔みのあったご家庭へ弔問(ちょうもん)へ行かれる方に向けて、お線香をあげる手順や宗派別のお線香をあげる時の本数のきまりなど、お線香のあげ方について徹底解説をいたします。
打敷(うちしき)
■浄土真宗本願寺派(お西)の打敷
■真宗大谷派(お東)の打敷
「打敷(うちしき)」は、お仏壇やお仏具を荘厳(お飾り)するための布で、浄土真宗を含む仏教全般で、年忌法要やお正月、春秋のお彼岸、お盆などの特別な行事の際に用いられます。
宗派ごとに紋様が異なり、浄土真宗では宗派ごとに専用の紋が施された打敷を使用します。
もともとは、お釈迦様が説法をされる際に、仏弟子たちがお釈迦様のために座具を敷いたことに由来するとされています。
夏用・冬用など季節に応じた素材やデザインが用意されており、季節ごとに使い分けるのが正式な使い方です。
華瓶(けびょう)
■浄土真宗本願寺派(お西)の華瓶
■真宗大谷派(お東)の華瓶
「華瓶(けびょう)」は、ご本尊の前に「樒(しきみ)」と呼ばれる植物の葉を一対でお供えするための仏具で、浄土真宗でのみ用いられます。樒を供えることで、水が腐るのを防ぐ役割も果たしていると言われています。
※しきみについて詳しくは<こちら>の項目をご参照ください。
華瓶のデザインも宗派ごとに特徴があり、浄土真宗本願寺派(お西)では黒色や宣徳色の華瓶、真宗大谷派(お東)では金色の華瓶を使用するのが一般的です。
供笥(くげ)
■浄土真宗本願寺派(お西)の供笥
■真宗大谷派(お東)の供笥
「供笥(くげ)」は、浄土真宗でお餅や落雁をお供えする際に使用する仏具で、他の宗派で用いられる「高杯(たかつき)」というお供え台に相当します。
供笥のデザインは宗派によって異なり、浄土真宗本願寺派(お西)では六角形、真宗大谷派(お東)では八角形のデザインが特徴です。
※浄土真宗でお供えする餅について、詳しくは<こちら>の項目をご参照ください。
吊灯籠(つりとうろう)
■浄土真宗本願寺派(お西)の吊灯籠
■真宗大谷派(お東)の吊灯籠
「吊灯籠(つりとうろう)」は、お仏壇内に吊り下げて使用する灯籠で、浄土真宗をはじめ他の宗派でも用いられる仏具です。
仏様の絵像や法名を優しく照らし、厳かな灯りがお仏壇の格式を高めます。常時点灯する必要はなく、お参りの際に点灯する形が一般的です。
浄土真宗では、宗派によってデザインが異なり、浄土真宗本願寺派(お西)では猫足、真宗大谷派(お東)では丁足の吊灯籠を使用します。
■浄土真宗でも、モダンな仏壇仏具を使っていいの?
近年では、伝統的なお仏壇だけでなく、インテリアに馴染むモダンなお仏壇や仏具を選ぶ方も増えています。
浄土真宗では本来、寺院の内陣を模した伝統的なお仏壇に、宗派専用のお仏具をお飾りする形が理想ですが、お寺様のお考えによっては、モダンな仏壇仏具を使用しても問題ないとする場合もあります。
後々のトラブルの原因にもなりますので、もし普段お世話になっているお寺がある場合には、モダン仏壇でも問題ないか事前にお寺に確認してから購入すると安心です。
※浄土真宗におけるモダン仏壇の飾り方について、詳しくは<こちら>の項目をご参照ください。
浄土真宗における基本的なお供え
他の宗派では先祖供養の意味合いとしてのお供えが一般的ですが、浄土真宗では、阿弥陀様への敬意や感謝の気持ちを表すためにお供えを行います。
普段のお供えとしては「お線香・仏花(お花)・ローソク・仏飯(ご飯)・しきみ」が基本ですが、法要やお盆などの特別な機会には、白いお餅や落雁をお供えするのが特徴です。
この項目では、浄土真宗におけるお供えの基本と、特徴的なお供えについて具体的に解説します。
多くの宗派では、お仏壇にお茶やお水を供えることで故人様の喉を潤す意味がありますが、浄土真宗では、水やお茶のお供えは基本的に不要とされています。
これは、亡くなられた方が阿弥陀様の力ですぐに極楽浄土へ往生し、そこには「八功徳水(はっくどくすい)」という清らかな水が豊富にあるため渇きを感じることがない、という教えに基づいています。
樒(しきみ)
浄土真宗では、水やお茶の代わりに「華瓶(けびょう)」と呼ばれる小さな壺型の仏具に水を入れ、「樒(しきみ)」という植物を挿してお供えします。
これは、極楽浄土に流れる清らかな水「八功徳水(はっこうどくすい)」を表現するとともに、樒が邪気を払うと考えられているためです。
※華瓶について、詳しくは <こちら>の項目をご参照ください。
もし樒が入手できない、夏場のお手入れが難しいなどの場合には、木製の常花(造花)での代用も可能です。
しきみ(木製造花)と華瓶のセット商品ページはこちら>>
■しきみ(華瓶)の水はいつ換えるべき?
しきみをお供えする際に華瓶に入れる水は、清潔を保つため、基本的には毎日換えることが望ましいでしょう。
ただし、木製のしきみ(造花)を使用する場合は、水を吸って変形や変色する恐れがあるため、華瓶には水を入れずにお供えください。
■樒(しきみ)について詳しくはこちら
樒(しきみ)とは?榊との違い・使用例
樒の基本情報と仏教・各宗派との関わり、榊(さかき)との違い、使用例について解説します。
仏花(ぶっか)
他宗では先祖供養の意味合いで花をお供えしますが、浄土真宗では、阿弥陀様への感謝を伝えて「仏様の慈悲の心」を分けていただくために仏花をお供えします。
お仏壇のお供えには一般的にも生花が適しているとされていますが、浄土真宗では特に生花が重視されます。
これは、花の香りもお供えの一部とするほか、花が枯れていく姿から「諸行無常」の教えを学び、命の尊さを再認識するためとされています。
餅
浄土真宗では、法要やお盆、お正月やお盆などの特別な行事の際に、お餅(お供え餅)をお供えする習慣があります。
お餅をお供えする際は、「供笥(くげ)」と呼ばれるお供え用の仏具を一対使用し、半紙や白紙を敷いた上に、鏡餅のように大小のお餅を重ねて供えるのが一般的です。
※供笥について詳しくは、<こちら>の項目をご参照ください。
仏飯(ご飯)
どの宗派でも共通で仏飯器に盛った仏飯(ご飯)をお供えしますが、他の宗派では丸く山盛りにするのに対し、浄土真宗ではご飯の盛り方に独自の特徴があり、浄土真宗本願寺派(お西)と真宗大谷派(お東)で形が異なります。
■仏飯(ご飯)の盛り方
- 浄土真宗本願寺派(お西): 蓮のつぼみをイメージした山型に盛ります。
- 真宗大谷派(お東): 蓮の実をイメージした円柱形に盛ります。
ご飯を円柱形に盛る真宗大谷派(お東)では、「盛槽(もっそう)」と呼ばれる専用の仏具を使うと、ご飯を綺麗に円柱状に整えることができて便利です。
和ローソク
どの宗派でも仏様へのお参りにはローソクを灯してお供えしますが、浄土真宗では「和ローソク」と呼ばれる特有のローソクを使用するのが一般的です。
和ローソクは芯に和紙を使用し、植物性の蝋で作られたもので、他宗でよく用いられる「西洋ローソク(洋ローソク)」とは異なります。
和ローソクには白と赤の2種類があり、普段のお参りには白を、法要やお盆などの特別な行事には赤を使用する形が一般的です。
ただし、使用方法はお寺によって異なる場合もあるため、不安な場合はお寺にご確認いただくと安心です。
お仏壇を購入したら「魂入れ」は必要なの?
お仏壇を購入した際、「魂入れ」が必要なのか迷われる方も多いのではないでしょうか?
この項目では、浄土真宗における「入仏式(にゅうぶつしき)」の必要性や、お寺に法要を依頼する際のお布施マナーについて解説します。
市販の掛軸を使用する場合には「入仏式」が必要
基本的に、どの宗派でもお仏壇に対する魂入れは不要とされていますが、お祀りの対象であるご本尊や脇仏、お位牌には「開眼供養(かいげんくよう)」が必要と考えられています。
この儀式は、住職の読経によって物を信仰の対象へと変えるもので、宗派によっては「魂入れ」や「お性根入れ」とも呼ばれます。
一方の浄土真宗では、「霊」や「魂」という概念自体がないため、「仏法にふれる新たな生活の始まりを祝う」といった意味合いで、「入仏式(にゅうぶつしき)」や「御移徙(おわたまし・ごいし)」と呼ばれる法要を執り行います。
※同じ浄土真宗でも、派閥によっては「入仏法要(にゅうぶつほうよう)」や「入仏慶讃法要(にゅうぶつきょうさんほうよう)」と呼ぶ場合もあります。
浄土真宗では、通常、本山から授与される入仏済みの掛軸(法物・授与物)をお祀りするため、法要を行う必要がない場合が一般的ですが、もし市販の掛軸を使用する場合は、購入後にお寺へ依頼して入仏式を執り行う必要があります。
ご自身がどのように用意すべきか不明な場合は、まずは菩提寺にご相談ください。
■お仏壇のご本尊について詳しくはこちら
ご本尊とは?宗派別一覧・祀り方
お仏像のご本尊について、宗派別に種類をご紹介し、各家庭のお仏壇にどのご本尊をどのようにお祀りすればいいか詳しく解説します。
入仏法要の依頼タイミング
四十九日法要のタイミングで住職に読経していただくケースが一般的です。
ただし、ご本尊の魂入れの時期に決まりはありませんので、前後しても問題はありません。
入仏法要を依頼する際のお布施相場
お寺に法要を依頼する際には、読経いただいたお礼として「お布施」をお渡しする必要があります。また、もしご自宅にお越しいただく場合には、別途お車代(交通費)も必要です。
一般的なお布施の費用相場は【3~5万円程度】が多いですが、他の法要と同時に行う場合は変動することもあります。
お寺によってはお布施の金額を明示している場合もありますので、不明な場合はお寺に直接お聞きいただいても失礼にはあたりません。
お布施の渡し方マナー
お布施をお渡しする際には、「御布施」の表書きをした封筒にお金を入れ、ご住職にお渡しする際には、「袱紗(ふくさ)」や「切手盆(名刺盆)」と呼ばれるお盆に載せて渡すのがマナーとされています。
※袋の表書きは、「入魂料」「開扉供養御礼」「入仏慶讃御礼」「御移徒御礼」などとすることもあります。
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■開眼供養について詳しくはこちら
開眼供養とは?意味・お布施
実施するタイミングや不要な場合、お布施の金額相場、表書き・お供えなど、開眼供養の準備から当日の流れまでを解説します。
浄土真宗のお仏壇に関してよくある質問
最後に、お仏壇のお祀り全般に対してよくある質問をご紹介いたします。ぜひ参考になさってください。
Q1.浄土真宗において、お仏壇はどんな意味があるの?どうして必要なの?
A.浄土真宗におけるお仏壇は、主に阿弥陀様をお祀りして信仰を深める場として必要と考えられています。ただし、現代ではこれに加えて、先祖供養の意味合いも強まっています。
浄土真宗のお仏壇は、ご本尊である阿弥陀如来をお祀りし、仏様への感謝と礼拝を通じて信仰を深める場として設けられています。
一方で、ご本尊を「ご先祖様全体の象徴」として捉え、私たちと故人様の両方を見守っていただく存在とする考え方も浸透してきています。
このように、現代においては、浄土真宗のお仏壇は信仰の対象である阿弥陀様をお祀りすると同時に、家族やご先祖様とのつながりを感じる場としても重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
■お仏壇の意味・必要性について詳しくはこちら
お仏壇とは?意味・役割
お仏壇とは何のためにあるのか、意味と役割・必要性を解説します。お仏壇が置けない場合の対処法として手作り(DIY)で供養スペースを準備することの可否についても触れています。
Q2.浄土真宗のお仏壇で、別の宗派の故人様をお祀りしてもいいの?
A.事前に双方の菩提寺にご相談いただければ、別の宗派の故人様を1つのお仏壇でお祀りすることが可能なケースもあります。
複数の宗派のお仏壇がある場合、基本的にはどちらか一方の宗派に統一する必要があります。
ただし、他宗派のお仏壇を一つにまとめることを望ましくないと考えるお寺や宗派もあるため、無理に統一せず、それぞれのお仏壇を分けてお祀りする方が良い場合もあります。
トラブルを避けるためにも、まずはそれぞれの菩提寺に「お仏壇を一つにしても差し支えないか」を確認することが重要です。また、親族間でも十分に話し合いを行い、全員の理解を得た上で決定することをおすすめします。
■お仏壇を二つ置く場合について詳しくはこちら
お仏壇が家に二つあるのはダメ?対処法も解説
お仏壇を一家に二つ置いてもいいのか疑問にお答えし、二つあるお仏壇の具体的な対処法やお位牌の取り扱い方などを解説します。